電脳世代のグループ展 『臨時展示空間 「6」』 

Posted on 6月 16, 2007

kunimoto

kawasaki_yousuke

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福岡県立美術館に『臨時展示空間「6」』を見に行った。
たまにあることだけれど、DM(ダイレクトメール)を見て「この展示は見に行かなければ」と、勝手に使命感を感じて見に行くことがある。
この展示はそういうものだった。
かっこいいDMだから見に行くとか、ちゃんとしたことを書いてあるから見に行くとか、そういうものではなかったりするから、DMとかフライヤーとかを作るのは本当に難しいと思う。

この展示は文字通り6人の作家によるグループ展なのだが、興味を引かれたのは作家が皆、僕と同じくらいの年代のアーティスト(1980年前後生まれ)ばかりだったのと、全員が福岡の人間では無かったことだ。
福岡のアートシーンというのは、小さいが故に同好会的なノリがあり、ややもすれば閉鎖的になりがちだという批判を度々聞くことがある。
それはアートシーンの中からも外からも聞こえてくることだ。
単純に、東京・名古屋・大阪あたりに比べると人や情報の行き来が少ないということも大きな要因だろう。
実際、県内作家の情報のやり取りですら不足しているのではないかと思うことも、あるのだ。

今回の6人はそれぞれ佐賀、熊本、大分、大阪出身の作家で構成されている。
住んでいる地域もバラバラだ。
だが、福岡で知られている作家はほとんどいない。

会場にはその日、国本泰英と川崎陽介の二人がいて話をすることが出来た。
どういう人の集まりなのかというのが一番気になっていたので、僕はすぐに彼らに聞いてみた。
すると国本と藤瀬大喜という二人の作家が発起人となって、主にweb上で有望と思われる作家を選んで6人展にしたのだという。
驚いた。
全員が面識のある集まりというわけではないのだという。

こういうレビューを書いておきながら矛盾するのだけれど、僕はwebコミュニケーションというのは、実のところ信用できるものではないと思っている。
単純に情報伝達という点で、何か決定的な不足があると思っていて、実際僕は過去何度も不毛な論争に巻き込まれたり、信頼していた人に裏切られたりして、どこに信用の根拠を見いだしていいか分からなくなってしまっているのだ。
だから、彼らのグループ展の成り立ちというのは僕にとっては離れ業である。
実際、参加作家はそれぞれweb上で簡単に作品を見ることが出来た。
国本はさらりと「Dragon art creator’s reviewで生島さんのレビューも読んだことあります」などと言う。
恐ろしい話である。

美術関係の人(特に僕より上の年代の人)に話を聞くと、ほとんどの人が「グループ展は慎重にしろ」という。
だが、一方で若い作家連中はweb上で知り合った人や知ったギャラリースペースなどでいとも簡単に展示を決めてしまう。
これについて正否を判断する前に、そういう現実があり、そういう現実からアートがどう立ち上がって来るのかということを僕は考えていきたいと思う。

今回はなんだか、展覧会レビューにはならなかったけれど、実はこの6人展には僕はすごく感心してしまった。
同世代の作家がいかにも今風のやり方でグループ展を成し遂げて、しかもそれぞれの作品も見応えがある。
6人の作家それぞれについてのレビューを書いても、僕は非常に長い文章を書いてしまうだろう。
特に絵描きとして感心したのは、川崎の色彩感覚、酒井の空間意識だ。
福岡の他にもこんな人たちが「地方」で創作に勤しんでいるのかと思うと、僕はそれだけで希望を得ることが出来るし、そういう人たちをもっともっと伝えなければならないと思う。
webの使い方もまた考えてみようと思う。

****************

『臨時展示空間「6」』
期間:2007.6.12(tue)~17(sun)
時間:10:00~17:00
会場:福岡県立美術館3階・展示室3
入場無料

参加作家:
川崎陽介 http://www15.plala.or.jp/DENDEN-ART/
酒井龍一
藤瀬大喜 http://rasudan.cocolog-nifty.com/
国本泰英 http://www.ykunimoto.net/
戸山亜紀 http://dropanddrop.sakura.ne.jp/
gaju≒松岡志保

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[ギャラリーからの手紙]>『MY WORLD, YOUR ANOTHER WORLD/HBK!』

Posted on 6月 12, 2007

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MY WORLD, YOUR ANOTHER WORLD02

MY WORLD, YOUR ANOTHER WORLD03

僕は福岡市薬院というところにあるIAF SHOP*というギャラリーでスタッフとして働き始めた。

まだスタッフになってから3ヶ月ほどでしかないけれど、ここにはいつも、世に出ていない若いアーティストから何十年もアートシーンを見守ってきた重鎮までざっくばらんに飲んだり話したりできる場がある。

ギャラリーの紹介はまた別の機会に譲るとして、僕がIAFのスタッフになってから「これは!」という展示が飛び出したのでどうしても紹介したいと思って、今こうして寄稿 している。作家の勢いに、背中を思いっきり蹴飛ばされたのだ。

その展示はHBK!(ヒビキ)という若い男の写真展『MY WORLD, YOUR ANOTHER WORLD』というものだ。

彼はうちのギャラリーのVIOLENCE部門担当のコジマドッグというスタッフが連れてきた写真家なのだけれど、立派な体格とややロシア風な顔立ち、そしてハードな服装と相まって、現れた瞬間強烈な印象を受けた。

さらに話してみると、なんとも朴訥とした真面目な人間なのだけれど、彼の風貌のせいかやはり言葉の端々に非常にパンク、反社会的、孤独、鋭利、 狂気というような印象が勝手にこちらの脳内に浮かんできてしょうがない。

いったいどんな人生を歩んできたら、こういう人間になるのだろう。

多くを語らない姿勢がよりこちらの印象を強くしていく人間だった。

そしてHBK!個展 初日。

個展としては初めてらしいのだったが、路上やイベントなどで何度も展示を重ねているらしく誰も心配していなかったのだが…。

ギャラリーの開く18時 になってもHBK!は姿を見せない。

どころか、IAFのギャラリースペースは空っぽ。

HBK!は15分程遅れてやってきた。

自分の作品を小脇に抱えて「すいません。自分ちの用事があったもので。」と言いながら、さっそく展示作業に入ったのだった。

IAF前代未聞 の出来事だと先輩方は苦笑していたが、僕は初日から楽しくてしょうがなかった。

唐突ではあるが、 僕は写真作品というものがどうにも分からない。

そこに美術的になんとかかんとかとか、それを考えなくても写真を見て自分がどうだとか、あまり感じることが出来ない。

絵を見ると、どんな作品であれ、僕はその作品に入り込む感覚がある。

自分の肌、感覚、記憶に合うものであれば 絵画でなくとも一般的にアートでくくられるものはどれも等しく、感銘を覚えた。

しかしなぜか写真だけは近くて遠いメディアとして、いつも僕の感覚の遠くを表しているのだ。

過去、名作と呼ばれたものですら僕は理性でも感性でもつかみ取ることが出来なかった。

ところがHBK!の作品を見て僕はざわざわとした思いが体の中に立ちこめてきたのだ。

これは絵だ。

HBK!の意識がどうあれ、僕には絵に見える。

そう認識できた瞬間、彼の作品は僕をドス黒い不安で包んでゆく。

まるで暗黒舞踏を見る時の、不安と恐怖と何か固い感覚の肌触り、それと郷愁すら覚えてしまう、ほんの少しの安心感。

恐怖や狂気に包まれる安心感。

その安心感がまた恐ろしい。

彼の作品にはそれがある。

ただエグイだけを売りにしている作品ではなかった。

僕はようやく写真を理解できたのだろうか。

とにかく、彼の写真からは多くのものを感じるのだ。

『できるだけ多くのお客さんにできるだけ自分の見方で作品を見てもらえるような“場”を作っていきたい 』

というのはIAFのボス、サトケイが最近自分のブログ(http://tenjinstreet.jp/satokei/)に書いていた言葉だ。

HBK!の展示は今、来てくれた人には何かしら強い印象を与えているようだ。

ギャラリースタッフとして、 充実感を感じると共に「おめーもしっかりやれよ」とHBK!の背中が僕に圧力をかけてくる。

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タイトル:MY WORLD, YOUR ANOTHER WORLD
作 家:HBK!
期 間:2007年5月31日[木]-6月17日[日]
休廊日:月・火・水曜日休廊
時 間:18:00-23:00(日曜13:00-18:00

IAF SHOP* にて

http://members.jcom.home.ne.jp/iaf_shop/index.htm

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~僕が少し縮んだ日~ [吉良留美個展『蟻(ANTS)』] 生島 国宜

Posted on 4月 15, 2007

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僕は身長が178cmある。体重は58kgである。体重はどうでもいいのだけれど、とにかく世間では割と背は高いほうだ。中学2年の頃から体型は変わらない。

僕は日本を出たことがないので、巷での、たとえば建物の大きさだとか椅子の大きさだとか、いわゆる日本人平均に合わせたであろうモノのサイズに狭苦しさを感じることが多い。飛行機だとか電車だとかの座席はいつも窮屈だ。
僕より身長の大きな人というのはいるのだけれど、そういう人を見ても「でかいなぁ」と思うだけである。だだっ広い場所に出ても「広いなぁ」と思うだけである。
何が言いたいかと言うと、広いものや大きいものを見ても自分の178cmの大きさというのは変わらないわけだ。つまりどんな環境であれ、中2以来、僕は日常生活の中で自分のことを「小さい」と思うことなんて、皆無だったということである。

福岡の現代美術シーンを語る上で、絶対に無視できないギャラリーと聞いていて、ようやく訪れることが出来た福岡市博多区千代。
「モダンアートバンク ヴァルト」がそこ。そのギャラリーで2007年4月4日~21日の期間で行われているのが吉良留美個展『蟻(ANTS)』。そのものずばり、小さな蟻の立体作品が並ぶ個展である。その立体作品が1匹、2匹貼り付けられた小作品も販売されていたが、何より圧巻なのはヴァルトのほとんどの床面を覆った蟻の大群である。蟻はフロアの真ん中を山型にすっぽり空けて群れている。そのすっぽり空いた空間はさながらモーセが海を割るかのごとく、来た人に対し左右に避けて行く蟻の群れのようでもある。また、見ようによっては獲物である人間を狙って襲いかからんとする、獰猛な軍隊蟻の群れのようにも見える。蟻たちの色は一様に緑青色で、これを美しいと思うか気持ち悪いと思うかは、大きく人の判断が分かれるだろう。僕は、小学生の時に図工の時間で使った油粘土を思い出した。

吉良留美はこのインスタレーションに対して、紙一枚のちょっとした文章を付けていた。キャプションというでもない、解説でもない、彼女が作品に合わせて書いた文章だ。彼女の立ち位置と、作品の立ち位置がほんの少しだけ分かる、ヒントが書かれている。この文章を読む限り、彼女は鑑賞者に対して「おぞましいもの」や「気持ちの悪いもの」を感じて欲しいと思っているようだった。そして、この作品の鑑賞方法として正当なのは、その大群の中に入って床に寝そべって見ることだと書いてあった。もちろん僕はそんなことはしない。なぜなら、人が土足で歩きまわる床なんかに寝そべったら服が汚れるからだ。

さて、床に寝そべることをしなかった僕は蟻の大群に囲まれて棒立ちのまま、とても不思議な感覚を得た。吉良の蟻は蟻というにはだいぶ大きい。正確に測ったわけでないが、5cmくらいはあるだろうか。当然そんな巨大蟻など見たことない。インスタレーションを行っている空間にはその蟻たちだけが群れていて、他には何も無い。
僕はここで目の前の風景に対して、自分の記憶の中の蟻の大きさを持ち出す。頭の中の蟻の大きさと現実の蟻の大きさ。どうしても合致しない。蟻は小さい虫であるはずなのに、ここに見える蟻は記憶より大きい。それでなんとか辻褄を合わせようと、じっと見ていると、あるタイミングでこの蟻たちが、僕の記憶上の蟻の大きさと合致した。真に目の前の人工蟻を、生き物である蟻だと認識できたわけだ。
その瞬間に、僕は蟻が巨大になった世界に迷い込んだ気がした。いや、もしかすると蟻が大きくなったのではないかもしれないぞ。感覚がそう僕に言う。僕は蟻が目測5cmに見える程度、世界の中で小さくなったのだ。不思議だ。かつて虫の巨大オブジェなど何度も見たけれど、そのモノを見て自分の身体にはね返ってくるような感覚は初めてだ。「僕ちっちゃくなってる。」という感覚は本当に新鮮だった。

というレビューを書いたものの、きっとこの作品に対する吉良留美の意図はもっと別のところにあるのだろう。けれど、僕にとってはこちらの身体感覚を揺さぶる体験のほうが、よっぽど衝撃的で重要だった。さらに言えば、彼女の作品は鑑賞者にただ「気持ち悪い」だけを強いるという、コンセプトを押し売る形の、一方的で幅の狭い脅威的作品ではないのだ。
作家の意図とは全く違うところに作品の真髄を感じてしまう鑑賞者。こういう現象は僕も展示をする側として、よく目の当たりにすることであり、それはネガティブにもポジティブにも取れるのだ。やはり作家と作品と鑑賞者の関係というのは、文字通りに一直線でつながる様な一筋縄というものではいかない。

MODERN ART BANK WALD(モダンアートバンク ヴァルト)
福岡市博多区千代4-12-2
092-633-3989

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作品 [秋田スカイホテルの風呂場]生島国宜

Posted on 4月 8, 2007

生島国宜
2005年のことである。私はアルバイトで某会社の全国展示会ツアーにくっついて日本中を回っていた。5つめか6つめの現場が秋田だった。全国ツアーが始まって2ヶ月程が経っており、その間自宅にほとんど帰れなかった私は、秋田では疲れきっていた。そこに用意されていたホテルのユニットバスは全面肉々しいピンク色で、私はその浴槽に浸かって、まったく疲労から回復しない自分の体を感じていた。ぬるま湯の中で、だんだん無心になっていったわけだけれど、ふと私は思った。このユニットバスの色はおかしい。いや、すごい。それから室内の写真を撮ったり、普段は滅多にやらないスケッチなんかをしてその景色を記憶するように努めた。全国ツアーはその後3ヶ月続いた。ツアー中に体が慣れ、異様な程体力のついた私は、ツアー後にこの絵を描いた。あのやたら肉々しいピンクのためにあれこれ描いているうちに、絵はどんどん大きくなっていき、こういう作品が出来上がった。

作品サイズ/1790×1505mm。素材/クラフト紙、ケント紙、トレーシングペーパー、アクリル絵の具、木炭。2005年作品

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