【左のポケット】その36「ベニス幻想、1」 長島義明

Posted on 2月 18, 2008

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二月のちょうど今頃、ベニスでは仮面祭りが行われる。その仮面祭りの日に僕は不思議な体験をした。少し、長い話になるがお付き合い願いたい。その日の夜、僕は酔っぱらってドカーレ宮殿の大理石の柱にもたれねむってしまった。なにか人の気配を感じてゆっくりと目を開けた。8つの顔が僕を覗き込んでいる。皆、やけに白い顔をしていて、笑っている顔が5つ、ツンと澄ました顔が3つ、瞬きもしない大きい目をしている。それが仮面であると理解するのにしばらく時間がかかった。「さあ、行こうか」仮面の人たちは僕の手を取り、立ち上がらせ、サンマルコ広場を横切りゴンドラがもやってある船着き場に連れて行った。「こうして両手を広げゆっくり羽ばたいてご覧」笑う仮面をつけた男がそう云うと、そばにいたツンと澄ました仮面の女性が羽ばたき、宙に浮き上がって行った。僕は言われたとうりに手を広げ羽ばたいた、少し体が持ち上がり宙に浮く。おもしろいのでさらに強く手を羽ばたくと、スゥーと、2、3Mほど上にあがった。それからはゆっくりと手を動かし、彼らといっしょにドゥカーレ宮殿を見下ろす高さまで上がり、カナルグランデの運河の上をリアルト橋めざして飛んだ。運河の両側は建物から漏れる灯でキラキラ光り、まるで蛍が川辺に遊んでいる様に見える。体がフワフワと浮き、とても軽く自由に動く、上下左右に飛ぶ事が出来る。仮面をつけた8人の男女も思い思いに飛んでいた。何時間飛んでいただろうか、気がつくとまたサンマルコ広場の上まで戻っていた。と、急に浮力がなくなりスゥーと体が落ちて行く、あわてて僕は両手をバタバタと羽ばたき、落ちない様にがんばった、でもすごい勢いで落ちて行く「ああ、落ちる、落ちる」誰かに肩をゆすられ目を開けると笑った仮面の男が立っていた。「もう、12時が過ぎたよ。こんな所で寝ていると風邪を引くよ」2月の仮面祭りの夜、僕は勧められたワインを飲み過ぎ酔っぱらい、ドゥカーレ宮殿の柱にもたれ眠つていた。仮面の男に起こされ目を覚まし、立ち上がると男に奇妙な招待を受けた。「明日,サンミケーレ島でパーティがあるので参加しないか」と云う。ベニスにはいくども来ているのでその島の事は良く知っている、そこは墓場だけで誰も住んでいないはずだ。「嫌なら、無理に誘わないがね、年に一度だけ島でパーティがあるんだ」なんだか面白そうな話だ。誘いを受ける事にした。話終わると黒いマントをひるがえし塔の柱の上に飛び乗りじーと立っている。

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★著者: 長島義明
★自己紹介:日本及び世界の人々、風景を40年以上撮り続けるフリーの写真家。著書にアメリカで出版された「One World One People」 「One World One Child」、「阪神大震災」、がある。 写真展「平和だった頃のアフガニスタン」は日本各地で30回以上開催。アメリカ美術雑誌協会最優秀賞受賞
★記事データ:掲載日 2008/2/18 at 9:49:47
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