【悪魔の使いに誘われて】(その2) 長島義明

Posted on 11月 10, 2007

翌朝、夜明け前に少年に誘われて村の裏の丘に登った。
遥か彼方、東の方に雪を被った山々が見える。その姿は清々しく、神々の峰と呼ぶに相応しい光景であった。
「おじさん、あの一番高い山、知っているかい」少年が指差す遥か彼方に一段と高い峰峰が白く輝いていた。
「エベレスト」少年が云った言葉に僕は、はっ、とした。
世界最高峰の山、エベレスト。
日が昇るまでその場に佇み、山々が明るく変化する姿を眺めていた。

家に帰り、昨夜と同じように少年は何処からか朝食を運んできた。
頭蓋骨の内側に銀の板を貼付けた椀、その中に蒸した粟(あわ)に酸っぱい乳白色の汁がかかっている。ヤギかヤクの乳だろう。すでに醗酵して酸味がきつい。しかし、まずくは無い。
朝食の後、僕たちは村のお寺を訪ねた。その時初めて村人に遭遇した。
ヤギの毛皮を身にまとい、例の青いトルコ石がついている飾りを頭に被っている。象の耳のような身なりもラダックで会った女性と同じである。
寺の前の広場に祭壇のような5M四方の四角い高台があり、村人が集まっている。何か祭壇に置かれている様だ。僕は祭壇で異様な物を見た。
それは明らかに人間とわかる。布に包まれ、鎖でしばられていた。
これはいったいなんなんだ。おまけにカギまでかけてある。
それを取り囲む村人が唱える呪文のような声。
時々、袋の中で動く事を見ると、中に居る人はまだ生きている様だ。
僕は少年に訪ねた。
「これは、なんなんだ?」英語を話すのは少年しかいない。
少年の表情が気味悪く変化する。
「いけにえーーー」「仏への生け贄ですーーー」
                        —続く。

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Filed Under 【悪魔の使いに誘われて】

★著者: 長島義明
★自己紹介:日本及び世界の人々、風景を40年以上撮り続けるフリーの写真家。著書にアメリカで出版された「One World One People」 「One World One Child」、「阪神大震災」、がある。 写真展「平和だった頃のアフガニスタン」は日本各地で30回以上開催。アメリカ美術雑誌協会最優秀賞受賞
★記事データ:掲載日 2007/11/10 at 15:20:56
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