【悪魔の使いに誘われて】(その1) 長島義明
Posted on 11月 9, 2007
ラダックの祭りの翌日、僕は一人の不思議な少年に声をかけられた。
「おじさん一人かい」
「そうだよ、日本からきたのだよ」
少年は顔も体も色粉を塗り、仮装している。
「僕は悪魔の使いなんだ」
「おじさんは空を飛ぶ人を見た事があるかい」
「そんな人間がいるわけないじゃないか」
「僕が案内するからついて来るかい、その代わり、案内料として10ドル払ってよ」
「10ドルとはずいぶんぼったくりだな」
そうは思ったが「空を飛ぶ人」と云う言葉に興味を持ち騙されるのを覚悟で
少年の話に乗った。その村に行くには一人の女性の許可がいると云うのでその女性に会いに行った。
女性は天然の真珠の首飾りをし、頭にはトルコ石の飾りをつけて、象の耳のような身なりをした貴人であった。ある部族の長だと云う。
その人の許しを得て、僕は翌朝、少年とヤク(牛より大きい動物)に乗り、険しい山道を登っていった。富士山よりはるか上の標高にその村があり、仏教を信じる人達が住むと云う。村には古い寺が一軒ある。
悪魔の使いだと云う少年と5、6時間もヤクの背中に揺られその村についた。ヒマラヤの山の中にとけ込むように人けのない村は、入ったとたん妖気が漂う不思議な空気を感じた。
空は茜色に染まり、夜がすぐそばにやってくる。
とりあえず、少年の指図にしたがい一軒の家に泊まることにした。
油がじりじりと灯をともす中、どこから持って来たのか、少年の差し出す食べ物を食べ、納屋のような部屋で眠りについた。
ーーー続く。
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