芸術はヘンタイだ!「森村泰昌―美の教室、静聴せよ」展  村松恒平

Posted on 9月 2, 2007

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この展覧会は、6時限の授業と放課後から成り立っていて、作品を観ながら各時限約10分間ヘッドフォンの音声で森村自身のレクチャーを聴く形式で進む。
展覧会は、自分の好きなペースで進めることに魅力を感じているので、この形式は最初少し窮屈だった。
また、作家が自作自注をするということにもやや不粋感があった。

しかし、慣れてくると、淡々としていながら意志の明瞭なレクチャーから森村泰昌の真摯な主張が伝わってくるように感じられて次第に面白くなり好感を持った。

ご存じのように森村泰昌は、さまざまな人物に自分を擬してセルフポートレートを撮るアーティストである。見ているうちに感じたのは、芸術としての批評性とかなんとかではなくて、この人はこれがやりたくて仕方ないのだな、ということだった。

今回の展覧会では、絵の中の人物になりきるというテーマ。
いろいろな人に扮しているから、それはリンクを見ていただくとして。

http://www.yaf.or.jp/yma/exhibition/2007/special/02_morimura/time.html

ヌードもある。それは、ノンケの僕としては、どちらかという見たくないかもしれなくて。しかし、表現として堂々としたものです。
絵の中に入りたいという欲望、それは子どもっぽい思いつきとしては、さほど珍しくはないかもしれません。
しかし、それを胸のうちに秘めているのではなくて、大人の行動力と意志を持って大がかりな準備をして実現してしまう。あまつさえ、それを大衆に芸術として公開し喝采を浴びる。
なんということでしょう。
その背後にいかなる性的嗜好があろうとなかろうと、これは立派なヘンタイさんです。
芸術的ヘンタイ。

人並み以上に強い知性も意志力も行動力も美術センスも経済力もあるヘンタイさんです。
しかも合法的ヘンタイです。

そもそも変態行為は、非合法であるか、あるいは当事者同士の秘かな合意に基づいて行われるわけです。
しかし、ここでは、一つの「芸術」という旗印による合意のもと、白昼堂々と完全に合法的な範囲でのヘンタイが行われているわけです。しかも、税金で作られた公的で立派な美術館において、授業という啓蒙的な形でヘンタイ行為が行われるわけです。公序良俗と秩序を愛する一般市民が、この悪影響を受けるわけです。

すばらしい!

美は、ヘンタイ的であるか、存在しなくなるでしょう。
なぜなら、最初から大衆に美しいと認識されるものは、すでにその類型が存在するからこそ認識されるのです。
大衆は初めて見る美は奇異の目で見るか、否定しなければいけません。
なぜなら、それが健全な市民道徳の基礎だからです。

しかしながら、芸術家はそうして否定されたものをしつこく作り続けるから、そのうち、人々は、「ひょっとしてこれって美しいの?」と誤解し始めるのです。
このような価値の転倒やブレが、今日の芸術の意味です。

しかしながら、森村泰昌をヘンタイであると、正しく認識し、リスペクトしたのは、僕だけかもしれません。
森村泰昌はヘンタイではなく、立派な芸術であるのがわからないのかと、非難されそうな恐怖を感じるのは、僕の被害妄想でしょうか?

森村泰昌は立派なヘンタイです。ヘンタイが先で芸術は後です。
どうもそのことがスルーされているような気がする。

森村泰昌という先駆者がいるのだから、若いアーティストは、おおいに勇気づけられなくてはいけません。
人は芸術の名の下に何をやってもいいのです(いちおう合法の範囲でということに…)。
芸術家はヘンタイでいいのです!

森村泰昌は、放課後に、三島由紀夫の割腹自殺前の演説を真似て、絶叫しています。一昔前なら、右翼が怒ってたいへんなことになったかもしれません。
いや、今でも何かこのことで事件が起きるなら、それこそ、森村泰昌の思うツボでしょう。
デビット・ボウイはかつて「僕はステージの上で暗殺されたいんだ」と言っていました。森村泰昌もそのように命がけで絶叫していると思います。

しかし、誰も本気で怒りません。
若いアーティストも大して勇気づけられません。
だからこそ、森村泰昌は、ますます「静聴せよ!」と絶叫しなければならないのでしょう。

僕はその絶叫を聞いて泣きそうになりました。
それが日本のある芸術の景色です。

(写真は会場にて『モナリザ』を演じる筆者。展覧会は9月17日まで。ぜひ行きましょう!)

Filed Under 展覧会, Review

★著者: 村松 恒平
★自己紹介:村松恒平 1954年東京生まれ。【DRAGON ART CREATOR'S REVIEW】編集人。編集者、ライター、芸術家。著書に『プロ編集者による 文章上達スクール』シリーズ(メタブレーン)など。面白いプロジェクトや、お仕事募集中!
★記事データ:掲載日 2007/9/2 at 21:26:28
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