コル氏の憂鬱 [ル・コルビュジエ展:建築とアート、その創造の軌跡 ]〜9/24 村松恒平 

Posted on 7月 16, 2007

建築家の展覧会というと、設計図や模型などモノトーンなものではないか、と想像するが、この展覧会は、ル・コルビジェの絵画、彫刻、実際には施工されなかった建築や都市計画の設計図をCG化した映像、本人が語る映像、建築物の再現、その他、カラフルで多様な展示に満ちていて飽きない。

ただし、絵画からは僕はどうもオリジナリティを感じない。キュビズムを批判的に継承して、ピュリズムと呼んでいたようだが、今の視線から見ると、どうにも「どこかで見たような」感を否めない(キュビズムを立体にしたような彫刻は面白い。3次元の人なのだ)。
しかし、彼はそれを長年一生懸命に描いた。絵が評価されないことを憤っていたようだが、その絵は、どうにも全体に原理に還元しようという志向が強すぎるように思う。
しかし、モジュロールも含め、彼の原理化しようとしたことは、建築の世界では、深くその後の展開に影響を与えたことだろう。

彼の集合住宅の原寸大の模型(中に入ることができる)は、ほとんど今日のマンションそのものである。彼の高度集積住宅や都市計画の構想では、同じサイズのマンションがびっしりと建ち並ぶ。当時、採用されず、CGによって実現されたその景観を現代の目で見れば、ほとんどモダニズムの悪夢のパノラマである。
黒川紀章氏をインタビューしたとき、モダニズムというものを激しく批判していたが、その意味が理屈で説明されなくても一目瞭然である。

コルビジェは、一人で頭の中に理想世界を描いていた。世界各国に13年間に8つの都市計画を提案したが、一つも実現採用されなかったと映像の中でスタッフが語っている。
(その後、唯一、インドで実現した都市計画がある)。

大成功した先見的な建築家であるのに、展示全体を通して、何か挫折した狷介で孤独な夢想家のような印象を受ける。実現できたものの喜びよりは、実現しなかった壮大な計画のほうに不思議なリアリティがある。
それが僕のひねくれた見方なのか、展示の狙いなのか、あるいは、コルビジェ自身から、そういう波動が発散されているのか。

ル・コルビジェの夢想した世界のパラレル・ワールドに僕らは生きているといってもいいのだろう。少しも挫折なんかしていないのかもしれない。とにかく、とてもいろいろなことを否応なしに考えてしまう、面白い力の入った展示でした。

森美術館 9月24日まで
http://www.mori.art.museum/jp/

Filed Under 展覧会, Review

★著者: 村松 恒平
★自己紹介:村松恒平 1954年東京生まれ。【DRAGON ART CREATOR'S REVIEW】編集人。編集者、ライター、芸術家。著書に『プロ編集者による 文章上達スクール』シリーズ(メタブレーン)など。面白いプロジェクトや、お仕事募集中!
★記事データ:掲載日 2007/7/16 at 13:17:58
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