[とに〜の美術館に行こう 2] LOHASな美術館 とに〜
Posted on 5月 30, 2007
日本には、まだまだ知られていない美術館が多い。
そんな知る人ぞ知る美術館に赴き、オンリーワンな感動と出会って来ようと始まったこの企画。
今回ご紹介するのは、“玉堂美術館”です。
その美術館があるのは、東京23区の西の西。
青梅マラソンで有名な青梅市にあります。
地図上では、“都内”であるものの、“東京”という感じは一切ありません。それはそれは、もう自然豊かな場所です。
美術館の最寄り駅であるJR御岳駅を降りると、御岳山をはじめとする雄大な山々や、多摩川が流れる御岳渓谷といった雄大な自然が、まず目に飛び込んでくると言った具合に。
反対に、人の気配は、なかなか飛び込んで参りません。そして、コンビニにいたっては、いつまで経っても。。。
なぜ、このような場所に、美術館が??
今回は、まず、その辺りからお話しすることにいたします。
玉堂美術館の“玉堂”とは、言わずと知れた近代日本画の巨匠・川合玉堂(1873〜1957)その人のこと。
川合玉堂が、昭和32年に亡くなるまでの、10余年間を過ごした場所と言うのが、この御岳でした。
玉堂が亡くなると、彼を慕っていた地元の人々や、全国にいる彼のファン、そして、玉堂に絵の手ほどきを受けていた皇后陛下様など、実に多くの人間たちから寄付金が集まり、この御岳渓谷に、玉堂の美術館を建設しようということになったのだそうです。
このように、寄付だけで、出来上がった美術館と言うのは、おそらく日本中でも、この玉堂美術館ただ一つ。世界中探したとしても、やはり、他にないのではないでしょうか。
まさに、人々のチャリティー精神で生まれた美術館。何とも心温まるお話なのでした。
と、同時に、この話から、川合玉堂が、いかに国民的な人気画家であったのかも、おわかりいただけたのではないでしょうか。
彼の絵は、どうして、そこまで人々を惹きつけたのでしょうか。
それは、玉堂が、自身が愛してやまなかったという『日本の四季が織り成す美しい自然』を描いたことにあります。
ん?そんなこと??
そういう絵を描いた画家は、それこそ、ごまんといるような気がします。
が、しかし、玉堂が活躍した当時、画題の主流はと言うと、龍や虎のような迫力ある生き物や、同じ風景画でも、中国の超自然的な風景。そんな時代に、日本の原風景という画題は、地味すぎると他の画家はあえて描かなかったのだとか。
しかし、絵の天才であり、努力家でもあった彼は、日本の自然を描き続けることで、ついには独自の境地を切り開き、日本画壇のトップにまで上りつめるのです。
玉堂の描く風景画を観ていると、その描かれた場所に何となく見覚えがあるような、軽いデジャヴュを感じることがあります。
これは、僕だけではないでしょう。
というのも、玉堂の絵は、一見、写実的に描かれた風景画のようにも見えますが、実はこの絵、彼が頭の中でイメージした風景を描いたもの。
日本人なら、きっと誰もが玉堂の絵と同じような風景を心の中に持っているのではないでしょうか。だから、玉堂の絵を観ると、妙に懐かしく、ノスタルジックな気分に浸れるのではないかと思うのです。
とここで、突然ですが、皆さんは、“ロハス(LOHAS)”という言葉をご存知でしょうか。
「Lifestyles Of Health And Sustainability」という英語の頭文字を取ったもので、その意味を簡単に説明すると、
『地球環境保護と健康な生活を最優先し、人類と地球が共栄共存できる持続可能なライフスタイル』ということ。
急に何の話をしたのかですか??
実は、この言葉が誕生するより、数十年も昔。まさにこのライフスタイルを、川合玉堂は自然豊かな御岳の地に移り住んで、実践。
さらには、絵の中に、何とこのロハスの理念を描いていたのです。
彼の絵には、自然が描かれていることは説明したとおりですが、その絵の多くに、人が描かれています。
そこに描かれる人間には、ある共通点があるのです。それは、皆、自然と共存して、働いている姿で描かれているのです。
現代社会での重要なキーワードとなっている「人類と自然の共存」。玉堂の絵は、まさに、そんな理想郷でもあるような気がします。
玉堂は絵を通して、現代に生きる僕たちに一つのメッセージを送っている。そんな気さえするのです。
それでは、今回も、この美術館に行ったら、是非観ておきたい3つのチェックポイントをお教えいたしましょう。
まず一つめは、『玉堂のポートレート』
玉堂美術館に入ると、まず目に飛び込んでくるのが、川合玉堂の姿を写した写真パネル。
まるで、玉堂自身が、僕らを出迎えてくれているかのようです。
この写真の顔に、実に何とも言えない感銘を受けました。
「人に優しく、自分に厳しい」そんな玉堂の、生き様すべてが写し出されているかのような凛とした表情。
温和そうであり、かつ芸術家としての威厳もある、その顔自体が、一つの芸術作品となっているかのようです。
言い方は、大変悪いのですが、お爺さんの顔に、ここまで“美”を感じたのは初めての経験。「若さ=美」ではないのですね。
生き方は、顔にすべて表れるのだなぁ。と、そんなことまで考えさせられてしまう一枚の写真。
二つめは、『庭園』
玉堂美術館には、玉堂の晩年の画室「随軒」が再現されています。
もちろん、この「随軒」も、なかなか見応えがあるのですが、美術館から「随軒」へと向かう、数10メートルの距離が二つ目のポイント。
ここをスーッと通ってしまっては、もったいない。
左手に目を向けていただきたい。そこには、整備の行き届いた枯山水の日本庭園があります。僕が訪れたのは4月の末でしたが、秋になると、紅葉やイチョウが色づいて、かなりの絶景になるのだそうです。
「そうだ、京都に行こう」。そう思い立ったら、まずは、御岳の玉堂美術館に行ってはいかがでしょう。たぶん、京都に行かなくとも、満足できるはずです。
そして、僕が、この美術館で一番気に入ったのは、この通路の右手側。
実は、ここにも、ガラスケースに覆われて玉堂の絵が展示されています。
自然を描いた玉堂の絵は、やはり、屋外で見るのが合っているように思います。外気を感じて、絵を鑑賞する。これは、ここならではの体験です。
そして、最後の3つめは、『季節に合わせた展示』
この美術館の最大の特徴とも言えるのが、展示品が小まめに替えられている点でしょう。
季節の自然をテーマに、多数の作品を残した玉堂。その玉堂の精神を、最大限に反映するために、季節に合わせて展示品を替えているのだそうです。
美術館の周りに春が訪れたら、春の季節を描いた絵に。初夏が訪れれば、春の絵ははずし、初夏の絵へと。美術館の中にも、きちんと季節感が取り入れられている。
ちなみに、例年より花の開花が早かった異常気象の今年、美術館に椿の絵がかけられるのも、例年より早かったのだとか。
特に展示替えの期間は設けず、その日のうちに、絵を展示換えしてしまうそうなので、季節の移り変わりによっては、今日と明日で、展示品が違うこともザラだと言う。
玉堂の作品の中には、忠臣蔵を描いた作品もあるそうで、これを展示するときは、年間でも討ち入りの日前後の数日だけ。そんなレアな作品も存在するのです。
そういう意味で、年間を通じて展示品が楽しめる美術館なのである。ただし、休館日だけは、行く前に調べておきましょう。
最後に一つお知らせがあります。
今年は、川合玉堂が亡くなってから、ちょうど50年という節目の年。
そこで、この玉堂美術館では、6/26〜7/16(予定)に、玉堂の回顧展を行うそうです。この間にしか、玉堂美術館で見られない絵も多々ありますので、是非お見逃しなく。
また、その期間中、玉堂の命日である6/30に訪れると、記念品を用意してくれているそうです。この日だけ、この記事を見た方が、大勢行かれるかもしれませんね。
さぁ、そんな“LOHAS”な美術館へ行こう!
玉堂美術館
住所:東京都青梅市御岳1-75 電話:0428-78-8335
開館時間:午前10時〜午後4時30分(入館は4時まで) 休館日:毎週月曜日(祝日のときは翌日)年末年始12/25〜1/4
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