【思考する目】16 長島義明
Posted on 5月 30, 2007
極東ロシア北緯40度、ツンドラの草原に朽ちた船があった。丸太をくりぬいた原始的な船である。おそらくその土地に嵐がきて川から打ち上げられたのであろう、いったい何時の時代の船だろうか。なかば土と化す船、僕が遭遇しなければ、それはその存在すらもない。朽ちた船を前にして思う、人もまた同じく,朽ちていく。だからそれを前にすると立ち去れない。もうここに来る事もないだろう。人は自分が生きている証として何か表現し、残したいのではないのだろうか。それが人により、音楽であり、絵画であり、映画であり、文学だと思う。僕もまた生きた証として写真と文章を残す。いずれこの舟のように朽ち果てるとも、その残骸をこの地に残そう、誰か偶然に僕の朽ちた舟に遭遇しないともかぎらないではないか。
誰知れず、土と化す船、草原の忘れ物。
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