【思考する目】16 長島義明

Posted on 5月 30, 2007

朽ちた舟

極東ロシア北緯40度、ツンドラの草原に朽ちた船があった。丸太をくりぬいた原始的な船である。おそらくその土地に嵐がきて川から打ち上げられたのであろう、いったい何時の時代の船だろうか。なかば土と化す船、僕が遭遇しなければ、それはその存在すらもない。朽ちた船を前にして思う、人もまた同じく,朽ちていく。だからそれを前にすると立ち去れない。もうここに来る事もないだろう。人は自分が生きている証として何か表現し、残したいのではないのだろうか。それが人により、音楽であり、絵画であり、映画であり、文学だと思う。僕もまた生きた証として写真と文章を残す。いずれこの舟のように朽ち果てるとも、その残骸をこの地に残そう、誰か偶然に僕の朽ちた舟に遭遇しないともかぎらないではないか。
誰知れず、土と化す船、草原の忘れ物。

Filed Under 【思考する目】

★著者: 長島義明
★自己紹介:日本及び世界の人々、風景を40年以上撮り続けるフリーの写真家。著書にアメリカで出版された「One World One People」 「One World One Child」、「阪神大震災」、がある。 写真展「平和だった頃のアフガニスタン」は日本各地で30回以上開催。アメリカ美術雑誌協会最優秀賞受賞
★記事データ:掲載日 2007/5/30 at 22:22:13
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