主婦からみた<柳宗理> 林みず枝
Posted on 4月 8, 2007
新しいものを買うのは快感だけど、ケイタイに関しては新製品が発表されるたびに、私は少しもの悲しい気持ちになる。あ〜あ、また出ちゃったのね。
あらゆるターゲットにむけて、機能も追加、デザインも変えられて発売される製品群。でもそれは、半年後には旧機種と呼ばれる古いものになり、値下げされ、やがて廃番になるのだ。テクノロジーの上にデザインをのせるということは、技術が進化していく限り、そのデザインがあっという間に消費されるということに違いない。その中にすてきなデザインもあったのにね。そういうことで経済は動いていくのだけど、ケイタイの世界は特にせわしない。デザインされる方がそれを楽しいと思っていてくれればいいけど。
今年の1月から3月頭まで行われた柳宗理のモダンデザイン展に行ったら、そうした世界とは真反対のものが並んでいた。家具にしてもキッチン用品にしても、超ロングセラーと誰にでもわかる製品の数々。美術館の展示品だからその場では手にとることはできないけど、いまだに日本のあちこちの店で買えるものばかりですから。どれを取ってもたいへん使いやすい。そして少しレトロな形。私が愛用している柳デザインのスプーンやグラスは、30年以上前のデザインらしい。でも買ったのはここ5、6年のことだ。
私は基本ケチなので、一度吟味して買ったものだったら、それが天寿を全うするまで使い続けたい。そのためには、まず使いやすくなくてはならないし、飽きのこないデザインでなければならないし、何より使う場所に置いてみてすこし個性的できれいと感じられるものがいい。オーソドックスだけでも飽きちゃいますので。
うちの中には、そんな条件を満たす柳デザインがだんだん増えてきているのです。
初めて買ったのは白磁の湯呑。たまたま行った新宿のOZONEで受け付けていた、限定復刻版。私は陶芸を始めたばかりで、陶磁器の形にものすごく興味がわいていた頃。この湯呑のラインがすごくすてきだったので、しばらくその形を目標に土をいじっていた。「手びねりで工業製品のまねをするなんてヘン」と友人に言われ、それも一理あるとも思ったけど、その後「カーサ ブルータス特別編集 柳宗理」を読んだら納得した。
「柳デザインにデザイン画の類はいっさいない。たたき台には立体模型を使うのだ。それも、手で作る。『手で使うものを、手で作らなくてどうするの?』柳宗理の理屈はシンプルである。」とある。
つまり、キッチンウェアのような道具類は実物大の模型をまず作る。作ったものを触ったり振ったり完成品と同じ使い方をする。修正して作り直してはまた使うことを繰り返して、ようやくできるのがたたき台。
これがさらにメーカーと研究所の間を何往復もして、図面起こしに入るのには、最終的に1年も2年も先とのこと。
工業製品の型起こしの一般的な手順は知らないけど、これがおそろしく手間のかかる方法であることはわかる。限りなく手作りに近い工業品なのじゃないだろうか。
ところで先日ヤカンが壊れたので、お湯が沸くのがすごく早いと評判の柳ヤカンを買えるチャンス!と喜んだら、夫が古いヤカンをあっさり直してしまった。ちょっとがっかり。いつかは買えると思うけど。
柳宗理 日本を代表するプロダクトデザイナー。父は民芸運動の柳宗悦。
1915年生。ということは今年で92歳。作られたものは、大きなものは札幌オリンピックの聖火台とか高速道路の料金所の防音壁から、小さなものは椅子とか鍋とかフライパンとかカトラリーとか。大橋歩さんの雑誌Arne1号(2002年10月)のインタビューでは、「フランスの耐熱ガラスのメーカーからポットを頼まれているけど、もう老年ですからできないかも」と答えておられます。それから2年経ちました。
なお、「Arne」も「カーサ ブルータス特別編集 柳宗理」もまだ買えるかも知れません。
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40代の主婦。去年仕事をやめて3ヶ月間家の片付けをしました。
後生大事に持っていた本を大量に捨てたあと、まったく困らないことに気がついてしまいました。
好きな言葉は「機能美」。柳宗理ファンとしては10年くらい。
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